工事経歴書の書き方を徹底解説|建設業許可・決算変更届で失敗しないポイント
建設業許可の申請や、許可取得後に毎年提出する決算変更届では、「工事経歴書」の作成が必要になることがあります。
工事経歴書は、単に完成した工事を並べて記載すればよい書類ではありません。
工事の種類、元請・下請の区分、請負金額、工期などを正確に整理して記載する必要があります。
特に、工事経歴書の内容と「直前3年の各事業年度における工事施工金額」の数字が合わないと、書類の修正が必要になる場合があります。
鹿児島県でも、決算変更届について「工事経歴書の金額」と「直前3年の各事業年度における工事施工金額」が一致しているかを点検項目として明示しています。 (鹿児島県公式ホームページ)
この記事では、鹿児島県で建設業許可申請や決算変更届を行う方にも役立つよう、工事経歴書の基本的な書き方から、よくある間違い、行政書士が確認しておきたいポイントまでわかりやすく解説します。
工事経歴書とは?
工事経歴書とは、建設業者がこれまでに施工した工事について、その内容や請負金額などを記載する書類です。
建設業許可の申請や変更・決算関係の届出などで使用されます。
国土交通省の様式では「様式第二号」とされ、主に次のような項目を記載します。
- 建設工事の種類
- 税込・税抜の区分
- 注文者
- 元請・下請の別
- JVの別
- 工事名
- 工事現場の所在地
- 配置技術者
- 請負代金の額
- 工期
国土交通省の工事経歴書の様式にも、これらの項目が定められています。 (国土交通省)
工事経歴書は「許可業種ごと」に作成する
工事経歴書を作成するときに、まず押さえておきたいのが、
「建設工事の種類ごとに作成する」
という点です。
例えば、建設業許可を受けている業種が、
- 建築工事業
- 大工工事業
- 内装仕上工事業
の3業種であれば、それぞれについて工事経歴を整理する必要があります。
1枚の工事経歴書にすべての工事をまとめて記載するものではありません。
また、1つの工事を複数の業種に重複して計上することにも注意が必要です。
工事の実態に応じて、どの建設工事の種類に該当するのかを判断することが重要です。 (国土交通省ハザードマップ)
工事経歴書の各項目の書き方
ここからは、工事経歴書の主な項目について解説します。
① 建設工事の種類
最初に、その工事経歴書がどの建設工事について作成されたものなのかを記載します。
例えば、
「建築工事」
の工事経歴書を作成するのであれば、建築工事に該当する工事を整理して記載します。
ここで注意したいのが、工事名だけで判断しないことです。
例えば「店舗改修工事」という名称だけでは、それが建築一式工事なのか、内装仕上工事なのかなどを判断できない場合があります。
実際にどのような工事を請け負ったのか
を確認することが大切です。
② 税込・税抜
工事経歴書では、請負代金について税込・税抜のどちらで記載するのかを明確にします。
途中で税込と税抜が混在すると、金額の比較や集計ができなくなります。
決算書や工事施工金額との整合性も確認しながら、適切に記載しましょう。
③ 注文者
「注文者」の欄には、その工事を発注した相手方を記載します。
ここで注意したいのが個人情報です。
鹿児島県は、工事経歴書について、注文者や工事名などから個人の氏名が特定されないように記入するよう案内しています。
例えば、
「青木」
ではなく「A」、
「青木邸新築工事」
ではなく
「A邸新築工事」
とする例が示されています。 (鹿児島県公式ホームページ)
工事経歴書を作成するときは、個人情報がそのまま記載されていないか確認しましょう。
④ 元請・下請の別
工事を直接施主などから請け負ったのか、それとも他の建設業者から請け負ったのかを区分します。
基本的には、
元請=施主等から直接工事を請け負ったもの
下請=他の建設業者から工事の一部を請け負ったもの
と考えるとわかりやすいでしょう。
例えば、ハウスメーカーから住宅工事の一部を請け負った場合などは、通常は下請工事として整理します。
⑤ JVの別
共同企業体(JV)として施工した工事については、該当する場合にJVとして記載します。
通常の単独受注であれば、該当しないことになります。
⑥ 工事名
工事名は、実際の工事内容が分かるように記載します。
例えば、
- ○○邸新築工事
- ○○店舗改修工事
- ○○マンション外壁改修工事
- ○○事務所内装工事
などです。
ただし、個人の氏名が特定されるような記載には注意が必要です。
⑦ 工事現場の所在地
工事を実際に施工した場所を記載します。
例えば、
「鹿児島県鹿児島市」
「鹿児島県日置市」
など、市区町村まで確認して記載します。
注文者の所在地ではなく、工事現場の所在地である点に注意しましょう。
⑧ 配置技術者
工事に配置した技術者について記載します。
工事の種類や工事金額、施工体制などによって確認すべき事項が異なるため、単純に会社の資格者を記載すればよいというものではありません。
特に主任技術者・監理技術者等の配置状況については、実際の工事内容や請負金額などを確認して整理することが重要です。
⑨ 請負代金の額
請負代金の額は、工事経歴書の中でも特に重要な項目です。
金額を記載するときは、税込・税抜の区分を統一するとともに、決算書や工事施工金額との整合性も確認します。
また、工事経歴書では千円単位で記載することが基本となります。国土交通省の記載例でも千円単位での記載が示されています。 (国土交通省 九州地方整備局)
例えば、
請負金額が「3,850,000円」であれば、
3,850千円
というように記載します。
⑩ 工期
工期については、
- 着工年月
- 完成年月
などを記載します。
工事台帳や契約書、注文書・請書などを確認しながら記載すると間違いを防ぎやすくなります。
工事を全部記載しなければならないの?
ここは非常に重要なポイントです。
工事経歴書は、必ずしも「その年度に行ったすべての工事を無制限に記載する」という仕組みではありません。
記載方法には一定のルールがあります。
例えば、元請工事について請負代金の額が大きいものから記載し、その後、一定の範囲まで他の元請工事や下請工事を記載するという考え方があります。軽微な工事についても記載件数に関するルールがあります。 (国土交通省ハザードマップ)
そのため、
「工事が多いから、適当に10件だけ選んで書けばよい」
というわけではありません。
工事の種類や元請・下請、請負金額などを整理したうえで、記載方法を判断する必要があります。
「直前3年の各事業年度における工事施工金額」との整合性に注意
決算変更届を作成するときに、特に注意したいのが、
工事経歴書と工事施工金額の数字が合っているか
です。
鹿児島県の決算変更届点検表でも、
「工事経歴書」の金額と「直前3年の各事業年度における工事施工金額」が一致していること
が確認事項として挙げられています。 (鹿児島県公式ホームページ)
例えば、工事経歴書を集計した金額と工事施工金額の合計が違っている場合、
「どこかの工事を落としている」
「業種の振り分けが違っている」
「税込・税抜が混在している」
「集計方法を間違えている」
などの可能性があります。
したがって、工事経歴書を作成したら、最後に必ず数字を照合しましょう。
よくある工事経歴書の間違い
ここでは、実務上注意したい代表的なミスを紹介します。
① 工事の種類を間違える
「外壁工事だから建築工事」
「水道工事だから水道施設工事」
など、工事名だけで判断してしまうケースです。
建設業の業種区分は、工事の内容によって判断する必要があります。
② 元請・下請を間違える
注文者が誰なのかを確認せずに記載すると、元請・下請の区分を間違えることがあります。
契約書や注文書などを確認して、実際の受注関係を整理しましょう。
③ 工事現場と注文者の住所を混同する
注文者の会社所在地と工事現場の所在地が異なることは珍しくありません。
工事経歴書に記載するのは工事現場の所在地です。
④ 金額の単位を間違える
円単位の資料を見ながら、そのまま工事経歴書に転記すると間違いやすくなります。
千円単位で記載することを意識しましょう。
⑤ 税込・税抜が混在する
A工事は税込、B工事は税抜というように混在させると、集計時に数字が合わなくなる原因になります。
工事経歴書の税込・税抜の区分と、他の書類との整合性を確認してください。
⑥ 個人名をそのまま記載してしまう
個人住宅などの工事では特に注意が必要です。
鹿児島県も、注文者や工事名等から個人の氏名が特定されないように記載するよう案内しています。 (鹿児島県公式ホームページ)
建設業許可申請と決算変更届では何が違う?
工事経歴書は、建設業許可の新規申請だけでなく、許可取得後の決算変更届でも登場します。
決算変更届は、原則として毎営業年度終了後4か月以内に提出します。
鹿児島県もその期限を案内しています。 (鹿児島県公式ホームページ)
つまり、
建設業許可を取得したら工事経歴書の作成が終わり、というわけではありません。
許可取得後も毎年、決算変更届を提出する際に適切な工事実績の整理が必要になります。
工事経歴書を作成するために準備しておきたい資料
工事経歴書をスムーズに作成するためには、日頃から工事情報を整理しておくことが大切です。
例えば、次のような資料を保管しておくとよいでしょう。
- 工事請負契約書
- 注文書
- 請書
- 工事台帳
- 請求書
- 入金記録
- 工事写真
- 配置技術者に関する資料
- 工期が分かる資料
特に複数の工事を同時に施工している会社では、決算期になってから過去の資料を探すと大変です。
工事を受注した時点から情報を整理する仕組みを作っておくこと
が、決算変更届をスムーズに行うポイントです。
行政書士が工事経歴書を作成するときの確認ポイント
行政書士として工事経歴書を作成・チェックする場合は、単なる転記作業として扱わないことが重要です。
最低限、次のような項目を確認しておくとよいでしょう。
1.許可業種との整合性
その工事が、どの許可業種に該当するのかを確認します。
2.工事内容
工事名だけでなく、実際の施工内容を確認します。
3.元請・下請
契約関係を確認します。
4.請負金額
契約書・注文書等と照合します。
5.工期
着工・完成時期を確認します。
6.工事現場
実際の施工場所を確認します。
7.配置技術者
実際の配置状況との整合性を確認します。
8.個人情報
個人の氏名などがそのまま記載されていないか確認します。
9.工事施工金額との整合性
工事経歴書と「直前3年の各事業年度における工事施工金額」の数字が合っているか確認します。
経営事項審査を受ける会社は特に注意
公共工事の入札を目指している会社の場合、工事経歴書はさらに重要になります。
鹿児島県では、経営事項審査を受ける場合、決算変更届の受付後に経営事項審査を受審する流れとなっています。 (鹿児島県公式ホームページ)
そのため、
決算変更届 → 経営事項審査 → 入札参加資格申請
という今後の流れを考えて、工事実績を正確に整理しておくことが重要です。
経営事項審査を予定している場合は、通常の決算変更届だけを考えるのではなく、経審で使用する工事実績についても意識して資料を整理しておくと安心です。
工事経歴書は「後から作る」のではなく「日頃から整理する」
工事経歴書で一番大切なのは、決算期になってから慌てて作成しないことです。
例えば、Excelなどで工事管理表を作り、
- 工事名
- 注文者
- 元請・下請
- 工事場所
- 工事種類
- 請負金額
- 着工日
- 完成日
- 配置技術者
などを日頃から記録しておけば、決算変更届を作成するときの負担を大幅に減らすことができます。
特に工事件数が多い会社ほど、日常的な管理が重要になります。
まとめ|工事経歴書は「正確な整理」と「数字の一致」が重要
工事経歴書は、一見すると工事内容を書くだけの簡単な書類に見えるかもしれません。
しかし実際には、
- 建設工事の種類
- 元請・下請の区分
- 工事内容
- 工事場所
- 請負金額
- 工期
- 配置技術者
- 個人情報
- 工事施工金額との整合性
など、確認すべきポイントが多くあります。
特に決算変更届では、工事経歴書だけを確認するのではなく、「直前3年の各事業年度における工事施工金額」や財務諸表など、他の書類との数字の整合性まで確認することが重要です。
鹿児島県では、現在の建設業許可・決算変更届の様式や記載例を県のホームページで公開しています。申請・届出を行う際は、最新の様式を確認するようにしましょう。 (鹿児島県公式ホームページ)
「工事経歴書の書き方がよく分からない」
「工事が多く、どの工事を記載すればよいか分からない」
「決算変更届を毎年きちんと提出したい」
という建設業者の方は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
鹿児島県の建設業許可・決算変更届については、工事経歴書だけでなく、各提出書類との整合性まで確認しながら準備することが大切です。
鹿児島県の建設業者の皆様へ
行政書士新川憲一事務所では、鹿児島県内の建設業者様を対象に、建設業許可申請をはじめ、許可取得後の変更届・決算変更届などについてご相談を承っています。
「建設業許可を取りたい」
「決算変更届の準備をしたい」
「工事経歴書の作成方法が分からない」
「許可取得後の手続きをまとめて管理したい」
といった場合も、お気軽にご相談ください。
一つひとつの確認を丁寧に行い、迅速・正確・誠実な対応を徹底します。
鹿児島県全域対応。建設業許可に関するご相談は行政書士新川憲一事務所まで。
参考資料
鹿児島県「決算変更届に係る申請書様式」では、現在の様式、点検表、財務諸表、工事経歴書の記入例などが公開されています。 (鹿児島県公式ホームページ)
鹿児島県「建設業許可に係る申請書様式」では、建設業許可申請や各種届出に使用する最新の様式・記入例等が公開されています。 (鹿児島県公式ホームページ)
鹿児島県鹿児島市春山町の行政書士新川憲一事務所です。
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