遺産分割協議書は誰が作る?行政書士に依頼できる?自分で作る場合との違いを解説
「遺産分割協議書は誰が作るの?」
「行政書士に依頼できる?」
「自分で作成しても大丈夫?」
相続手続きを進めていると、このような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
遺産分割協議書は、相続人全員で話し合って決めた遺産の分け方を記載した書面です。相続人が複数いる場合、預貯金、不動産、自動車などの相続手続きを進める際に必要となることがあります。
結論からいうと、遺産分割協議書は相続人自身で作成することができます。
一方で、相続人の調査や戸籍の収集、相続財産の確認、書面の作成などに不安がある場合は、行政書士に相談・依頼することもできます。
ただし、行政書士が相続人の代わりに遺産の分け方を決めたり、相続人同士の争いについて交渉したりすることはできません。
この記事では、
- 遺産分割協議書は誰が作るのか
- 行政書士に何を依頼できるのか
- 自分で作成する場合の注意点
- 行政書士・司法書士・弁護士の役割の違い
について、分かりやすく解説します。
1.遺産分割協議書は誰が作る?
遺産分割協議書は、相続人自身で作成することができます。
必ずしも行政書士などの専門家に依頼しなければならないわけではありません。
例えば、相続人が3人いて、
- 預貯金は長男
- 自宅は長女
- 自動車は次男
というように、相続人全員の話し合いがまとまったとします。
この場合、その合意した内容を遺産分割協議書として書面にまとめます。
重要なのは、**「専門家が遺産の分け方を決めるのではなく、相続人全員が話し合って決めた内容を文書にする」**という点です。
そのため、遺産分割協議書を作成する前に、まず相続人と相続財産を正確に確認する必要があります。
2.遺産分割協議書を作る前に、まず相続人を確認する
遺産分割協議書を作成する際に、特に重要なのが相続人の確定です。
例えば、
「父の相続人は、母と自分と弟の3人だろう」
と思っていても、戸籍を確認したところ、父に前婚の子がいることが判明するケースがあります。
その場合、その子も相続人となります。
相続人を全員把握しないまま遺産分割協議を進めてしまうと、協議の有効性や相続手続きに問題が生じる可能性があります。
そのため、基本的には次のような順序で進めます。
- 戸籍などを確認する
- 相続人を確定する
- 相続財産を調査する
- 相続人全員で遺産の分け方を話し合う
- 合意した内容を遺産分割協議書にまとめる
- 各財産について相続手続きを進める
この順番を意識して進めることが大切です。
3.行政書士に遺産分割協議書を依頼できる?
はい、相続人全員の合意が成立していることを前提として、行政書士に遺産分割協議書の作成を依頼できます。
日本行政書士会連合会も、行政書士の相続業務として、遺産分割協議書や相続関係説明図などの書類作成、相続人や相続財産に関する調査を案内しています。
例えば、
「相続人同士で話し合いはまとまっている」
「誰がどの財産を取得するか決まっている」
という場合には、その合意内容をもとに行政書士が遺産分割協議書などの書類作成をサポートします。
また、遺産分割協議書の作成だけでなく、
- 相続人の調査
- 戸籍・除籍謄本などの収集
- 相続関係説明図の作成
- 相続財産に関する資料の整理
などをまとめて相談できる場合があります。
「自分で集めたり調べたりするのは大変」という方にとって、こうした部分を専門家に依頼する方法があります。
4.行政書士に依頼する場合、何をしてもらえる?
行政書士に相続手続きを相談する場合、主なサポート内容は次のとおりです。
① 相続人の調査・戸籍収集
相続人を確定するためには、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を確認するなど、必要な戸籍関係書類を収集・確認する必要があります。
相続人が多い場合や、婚姻・離婚・転籍などによって戸籍が複雑になっている場合には、収集に時間がかかることがあります。
行政書士は、行政書士業務として必要な戸籍等について、法令に基づく職務上請求を利用して収集することがあります。なお、職務上請求は行政書士業務として必要な場合に適正に行う必要があります。
② 相続関係説明図の作成
収集した戸籍などをもとに、相続人の関係を整理した「相続関係説明図」を作成します。
相続人が多い場合には、相続関係を整理するうえで役立ちます。
③ 遺産分割協議書の作成
相続人全員の合意内容をもとに、遺産分割協議書を作成します。
不動産、預貯金、自動車など、対象となる財産を具体的に特定して記載することが重要です。
なお、不動産の相続登記そのものは行政書士の業務ではなく、司法書士などが取り扱う業務です。
5.遺産分割協議書には何を書く?
遺産分割協議書には、**「誰が・どの財産を取得するのか」**を明確に記載します。
対象となる主な財産は、
- 土地・建物
- 預貯金
- 自動車
- 有価証券
- その他の財産
などです。
不動産の場合
土地や建物については、登記事項証明書などを確認し、所在地、地番、家屋番号などを正確に記載します。
「鹿児島市○○町の家」といった曖昧な表記では、相続登記などの手続きで使用する際に問題となる可能性があります。
法務局も、相続登記に使用する遺産分割協議書について、不動産の表示を登記記録に基づいて記載するよう案内しています。
預貯金の場合
金融機関名、支店名、預金種別、口座番号などを確認し、対象となる預貯金を特定できるように記載します。
財産の特定が不十分な場合、金融機関での手続きの際に追加確認が必要になることがあります。
6.遺産分割協議書には相続人全員の署名・押印が必要?
遺産分割協議書は、相続人全員が合意した内容を記載する書面です。
相続登記などの手続きでは、法定相続人全員が署名し、実印を押印した遺産分割協議書と、相続人全員の印鑑証明書を提出する取扱いがあります。
法務局の案内でも、遺産分割協議による相続登記について、遺産分割協議書に法定相続人全員が実印を押印し、その印鑑証明書を添付することが案内されています。
ただし、必要書類は手続きの種類や提出先によって異なります。
例えば、
- 不動産の相続登記
- 銀行の預貯金の相続手続き
- 自動車の名義変更
では、それぞれ必要となる書類や取扱いが異なる場合があります。
そのため、遺産分割協議書を作成するときには、実際に使用する手続きについて必要書類を確認しておくことが大切です。
7.自分で遺産分割協議書を作ることもできる?
はい、自分で作成することもできます。
例えば、
- 相続人が少ない
- 相続関係が明確
- 財産の種類が少ない
- 不動産の権利関係が複雑ではない
- 相続人全員の話し合いがまとまっている
というケースでは、自分で作成する方法もあります。
ただし、単に文章を書けばよいわけではありません。
相続人に漏れがないか、相続財産を正確に把握しているか、手続きに必要な内容が記載されているかなどを確認する必要があります。
8.自分で作成するときに注意したいポイント
自分で遺産分割協議書を作成する場合は、特に次の点に注意しましょう。
① 相続人に漏れがないか
戸籍などを確認し、相続人を正確に確定しているか確認します。
② 財産に漏れがないか
預貯金、不動産、自動車、有価証券など、相続財産をできるだけ確認します。
③ 不動産が正確に記載されているか
登記事項証明書などを確認し、土地・建物を特定できるように記載します。
④ 預貯金が正確に記載されているか
金融機関名、支店名、預金種別、口座番号などに誤りがないか確認します。
⑤ 相続人全員の合意があるか
一部の相続人を除外したまま作成していないか確認します。
9.遺言書がある場合はどうする?
遺産分割協議書を作成する前に、遺言書が残されていないか確認することも重要です。
遺言書がある場合には、その内容や種類、相続人との関係などを確認したうえで、相続手続きを進める必要があります。
遺言書がある場合でも、一定の要件のもとで相続人全員による遺産分割協議が行われるケースはあります。
そのため、「遺言書がある=必ず遺言書どおりにしか相続できない」と単純に考えるのではなく、遺言書の内容を確認したうえで判断することが大切です。
10.借金などの債務も確認する
相続財産を調査するときは、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借入金などのマイナスの財産についても確認しましょう。
例えば、
- 住宅ローン
- カードローンなどの借入金
- 未払金
- 未払税金
- その他の債務
などがあります。
相続放棄を検討している場合には、特に注意が必要です。
相続放棄は、原則として自分が相続人となったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。
相続財産の調査が終わらず、相続放棄をするかどうか判断できない場合には、期間伸長の手続きが認められる場合もあります。
借金があるなど、相続放棄を検討している場合には、早めに専門家へ相談することが重要です。
11.行政書士ができないことにも注意
行政書士は相続に関する書類作成や調査をサポートできますが、相続に関するすべての問題を扱えるわけではありません。
特に注意が必要なのが、相続人同士で争いになっている場合です。
例えば、
- 「遺産の取り分について意見が割れている」
- 「他の相続人と交渉してほしい」
- 「遺産分割調停を申し立てたい」
- 「相手方との交渉を代理してほしい」
といったケースです。
このような紛争についての代理交渉などは、弁護士の業務領域です。
行政書士は、相続人全員の合意が成立した内容をもとに、遺産分割協議書などの書類を作成することを基本としています。
そのため、すでに相続人同士で争いになっている場合は、行政書士だけで解決しようとせず、弁護士への相談を検討することが重要です。
12.不動産の相続登記は司法書士へ
遺産分割協議書を作成した後、不動産を相続する場合には、相続登記が必要になります。
不動産の相続登記については、司法書士が専門的に取り扱っています。
法務局によると、令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化されています。
相続に関する専門家の役割を大まかに整理すると、次のようになります。
- 行政書士:相続人調査、戸籍収集、相続関係説明図、遺産分割協議書などの書類作成をサポート
- 司法書士:不動産の相続登記などをサポート
- 弁護士:相続人間の紛争についての交渉・調停・訴訟などを取り扱う
実際の相続では、必要に応じて複数の専門家に相談するケースもあります。
13.遺産分割協議書を作る前に確認しておきたいチェックリスト
協議書を作成する前に、次の項目を確認してみましょう。
- □ 相続人:戸籍などを確認し、漏れなく把握できていますか?
- □ 遺言書:遺言書の有無を確認しましたか?
- □ 相続財産:預貯金・不動産・自動車などを調査しましたか?
- □ 債務:借入金などのマイナスの財産を確認しましたか?
- □ 相続人全員の合意:遺産の分け方について全員の合意が得られていますか?
- □ 必要な手続き:作成した協議書をどの手続きで使用するのか確認していますか?
14.行政書士に依頼するか、自分で作るかの判断基準
自分で作成するか、行政書士に依頼するかは、相続の状況に応じて判断するとよいでしょう。
自分で作成することを検討しやすいケース
- 相続人が少ない
- 相続関係が明確
- 財産の種類が少ない
- 相続人全員の合意が成立している
- 自分で戸籍収集や書類作成を進められる
行政書士への相談を検討したいケース
- 相続人が多い
- 前婚の子や養子などがいて戸籍が複雑
- 不動産や預貯金が複数ある
- 戸籍収集に時間をかけるのが難しい
- 遺産分割協議書の作成方法に不安がある
- 相続手続きをどこから始めればよいか分からない
一方、すでに相続人同士で争いになっている場合は、弁護士への相談を検討しましょう。
15.遺産分割協議書を作成した後は?
遺産分割協議書を作成したら、合意した内容に従って各種の相続手続きを進めます。
例えば、
- 預貯金:解約・払い戻し・名義変更
- 不動産:相続登記
- 自動車:名義変更
- 有価証券:証券会社などでの相続手続き
などがあります。
遺産分割協議書の作成は、相続手続きの一つの重要な段階です。
協議書を作成した後も、各財産について必要な手続きを進める必要があります。
16.遺産分割協議書は「話し合いの結果」を記録するもの
遺産分割協議書について、ぜひ覚えておいていただきたいことがあります。
それは、専門家が相続人に代わって遺産の分け方を決めるものではないということです。
例えば、
「自宅は長男が取得する」
「預貯金は長女が取得する」
といった内容は、相続人同士で話し合って決めます。
行政書士は、その合意内容をもとに遺産分割協議書などの書類を作成することができます。日本行政書士会連合会も、遺産分割協議書を行政書士が扱う「権利義務に関する書類」の一つとして案内しています。
そのため、
相続人が話し合う
↓
遺産の分け方について合意する
↓
合意内容を遺産分割協議書にする
↓
各種の相続手続きを進める
という流れを理解しておくとよいでしょう。
まとめ|遺産分割協議書は自分でも作れる。不安な場合は行政書士へ
遺産分割協議書は、相続人自身で作成することができます。
一方で、相続人調査や戸籍収集、相続財産の整理、遺産分割協議書の作成などに不安がある場合には、行政書士に相談することもできます。
特に、
- 相続人が多い
- 戸籍が複雑
- 財産が複数ある
- 不動産がある
- 戸籍収集が大変
- 遺産分割協議書の作成方法が分からない
という場合には、専門家に相談することで相続手続きを整理しやすくなります。
一方、
- 相続人同士で争っている
- 遺産の分け方について合意できない
- 他の相続人との交渉を代理してほしい
- 遺産分割調停などを検討している
という場合には、弁護士への相談を検討しましょう。
また、不動産の相続登記については司法書士への相談が適しています。
大切なのは、相続人を正確に確認し、相続財産を整理したうえで、相続人全員の合意内容を適切に書面にすることです。
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例えば、
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- 戸籍・除籍謄本などの収集
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