自筆証書遺言と公正証書遺言の違い|どちらを選ぶべき?行政書士が解説
「遺言書を作りたいけれど、自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらがいいの?」
遺言書を作成しようとすると、このような疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
遺言にはいくつかの種類がありますが、一般的に利用されることが多いのが自筆証書遺言と公正証書遺言です。
どちらにもメリット・デメリットがあり、家族構成や財産の内容、遺言を作る目的によって適した方法は異なります。
この記事では、自筆証書遺言と公正証書遺言の違いについて、行政書士がわかりやすく解説します。
自筆証書遺言とは?
自筆証書遺言は、遺言をする本人が自分で作成する遺言です。
原則として、遺言者本人が遺言書の本文、日付、氏名を自書し、押印する必要があります。
ただし、財産目録については、一定の要件を満たせば自書によらず作成することができます。
自筆証書遺言の大きなメリットは、比較的手軽に作成できることです。
公証役場に行かなくても作成できるため、「まずは遺言書を作っておきたい」という方にも利用しやすい方法です。
自筆証書遺言のメリット
① 費用を抑えやすい
自筆証書遺言は、自分で作成する場合、公正証書遺言のような公証人の手数料がかかりません。
ただし、専門家に作成を相談・依頼する場合には、別途専門家への報酬が発生することがあります。
② 自分のタイミングで作成できる
公証役場での手続きが必須ではないため、自分の都合に合わせて作成できます。
③ 内容を比較的自由に検討できる
自分の財産や家族関係を整理しながら、どのように財産を残したいのかを考えることができます。
自筆証書遺言のデメリット
一方で、自筆証書遺言には注意点もあります。
① 法律上の要件を満たす必要がある
遺言書には法律上のルールがあります。
書き方を間違えると、遺言の全部または一部が無効になる可能性があります。
「自分で簡単に書ける」というメリットがある一方で、正しい方式で作成することが重要です。
② 紛失・改ざんなどのリスク
自宅などで保管している場合、紛失したり、相続人に発見されなかったりする可能性があります。
また、遺言書をめぐって相続人間でトラブルになる可能性もあります。
③ 相続開始後に検認が必要になる場合がある
自筆証書遺言については、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していない場合、原則として家庭裁判所での検認が必要です。
ただし、法務局に保管されている自筆証書遺言については、検認の手続きは不要です。
自筆証書遺言書保管制度とは?
自筆証書遺言には、法務局の自筆証書遺言書保管制度があります。
これは、自分で作成した自筆証書遺言を法務局に預けて保管してもらう制度です。
自宅で保管する場合と比べて、紛失や相続人による廃棄・改ざんなどのリスクを抑えることができます。
また、法務局に保管された自筆証書遺言については、相続開始後の検認が不要となります。
「自筆証書遺言にしたいけれど、自宅で保管するのは不安」
という方は、この制度を検討するとよいでしょう。
公正証書遺言とは?
公正証書遺言は、公証人が関与して作成する遺言です。
遺言者が公証人に遺言の内容を伝え、公証人がその内容を公正証書として作成します。
作成には、原則として証人2人の立会いが必要です。
公正証書遺言は公証役場で作成され、原本が公証役場で保管されます。
そのため、自宅で遺言書を保管する場合と比べて、紛失や改ざんなどのリスクを抑えられるというメリットがあります。
公正証書遺言のメリット
① 遺言の方式について公証人が関与する
公証人が関与して作成するため、自筆証書遺言と比べて方式上の不備を防ぎやすくなります。
もちろん、どのような内容でも必ず問題が起きないという意味ではありません。
財産や相続人の状況を確認しながら、適切な内容にすることが重要です。
② 原本が公証役場で保管される
公正証書遺言の原本は公証役場で保管されます。
そのため、自宅で保管する場合のように、紛失してしまうリスクを抑えることができます。
③ 原則として検認が不要
公正証書遺言については、相続開始後の家庭裁判所による検認は必要ありません。
そのため、相続開始後の手続きを比較的スムーズに進めやすいというメリットがあります。
公正証書遺言のデメリット
① 公証人の手数料が必要
公正証書遺言を作成する場合、公証人の手数料が必要になります。
手数料は財産の価額などによって異なります。
そのため、自筆証書遺言と比べると、作成時の費用がかかります。
② 証人が必要
公正証書遺言を作成する場合、原則として証人2人が必要です。
証人には一定の欠格事由がありますので、誰でもよいわけではありません。
③ 公証役場での手続きが必要
公証人との打ち合わせや必要書類の準備など、自筆証書遺言と比べると手続きが増えます。
自筆証書遺言と公正証書遺言の違い
それぞれの特徴を簡単に比較すると、次のようになります。
| 項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
|---|---|---|
| 作成方法 | 原則本人が自書 | 公証人が作成 |
| 公証人 | 原則関与しない | 関与する |
| 証人 | 原則不要 | 原則2人必要 |
| 費用 | 比較的抑えやすい | 公証人手数料が必要 |
| 保管 | 自分で保管または法務局 | 公証役場で原本保管 |
| 検認 | 保管制度を利用しない場合は原則必要 | 不要 |
| 作成の手軽さ | 比較的手軽 | 事前準備が必要 |
| 方式上の安心感 | 自分で確認する必要がある | 公証人が関与 |
結局、どちらを選べばいい?
「自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらが優れているのか?」
という疑問については、一概にどちらが正解とはいえません。
ただし、次のように考えると選びやすくなります。
自筆証書遺言を検討しやすい人
- できるだけ費用を抑えたい
- 自分で遺言書を作成したい
- 比較的シンプルな財産・家族構成である
- 法務局の保管制度を利用したい
このような方は、自筆証書遺言を検討するとよいでしょう。
公正証書遺言を検討しやすい人
- 遺言の内容をできるだけ確実に残したい
- 財産が多い
- 不動産を複数所有している
- 相続人が多い
- 家族関係が複雑
- 相続人同士のトラブルをできるだけ避けたい
- 自分で遺言書を作成することに不安がある
このような場合には、公正証書遺言を検討するメリットがあります。
遺言書は「書けば終わり」ではありません
遺言書を作成するときには、単に財産の分け方を書くのではなく、現在の家族関係と財産状況を整理することが重要です。
例えば、
- 相続人は誰なのか
- 不動産はいくつあるのか
- 預貯金はいくらあるのか
- 借入金はないか
- 誰にどの財産を残したいのか
- 相続人同士でトラブルになる可能性はないか
などを確認します。
また、財産や家族状況が変わった場合には、遺言書の内容を見直す必要が生じることもあります。
行政書士に遺言書の相談をするメリット
「遺言書を作りたいけれど、何を書けばいいのかわからない」
という場合は、行政書士に相談する方法があります。
行政書士は、遺言書の作成に関する相談や、必要な戸籍・財産関係資料の収集、遺言内容の整理、遺言書作成のサポートなどを行うことができます。
例えば、
「妻に自宅を残したい」
「長男に事業を引き継いでもらいたい」
「子どもがいないので、妻にできるだけ財産を残したい」
といった希望を整理し、どのような遺言を検討すればよいのかを一緒に考えることができます。
なお、公正証書遺言そのものは公証人が作成するため、行政書士が公正証書遺言を作成するわけではありません。
行政書士は、公正証書遺言を作成するための事前準備や必要書類の収集、遺言内容の整理などをサポートすることができます。
まとめ
自筆証書遺言と公正証書遺言には、それぞれメリットとデメリットがあります。
自筆証書遺言
→ 費用を抑えやすく、比較的手軽に作成できる
公正証書遺言
→ 公証人が関与し、原本が公証役場で保管されるため、より確実に遺言を残したい場合に向いている
また、自筆証書遺言については、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する方法もあります。
大切なのは、「どちらが優れているか」だけで決めるのではなく、自分の家族構成や財産状況、遺言を作る目的に合わせて選ぶことです。
「自分の場合はどちらが向いているのかわからない」
「遺言書に何を書けばいいのかわからない」
という方は、まず現在の家族構成や財産を整理してみましょう。
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【1問1答】遺言書の基礎知識
問題1
自筆証書遺言は、必ずすべての財産目録を本人が手書きしなければならない。
答え:×
一定の要件を満たせば、財産目録については自書によらず作成することができます。
問題2
公正証書遺言は、原則として証人2人の立会いが必要である。
答え:○
公正証書遺言の作成には、原則として証人2人の立会いが必要です。
問題3
公正証書遺言は、相続開始後に必ず家庭裁判所で検認を受けなければならない。
答え:×
公正証書遺言については、検認は不要です。
問題4
自筆証書遺言は、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用できる。
答え:○
一定の要件を満たした自筆証書遺言を法務局に預けることができます。
問題5
「自筆証書遺言と公正証書遺言は、必ず公正証書遺言の方が優れている」といえる。
答え:×
家族構成、財産状況、費用、遺言を作成する目的などによって適した方法は異なります。
自分の状況に合った方法を検討することが大切です。
