自動車販売店が車庫証明・自動車登録を代行するのは違法?行政書士法第19条を具体例で解説

「車を購入したら、販売店が車庫証明までやってくれる」

「自動車登録の手続きは、ディーラーや中古車販売店に任せている」

このようなケースは、現在でも珍しくありません。

しかし、自動車販売会社の従業員が、顧客に代わって車庫証明申請書や自動車登録申請書を作成することについては、行政書士法上の問題が生じる場合があります。

特に注意したいのが、2026年(令和8年)1月1日に施行された改正行政書士法です。

さらに、日本行政書士会連合会は2026年7月29日、自動車販売会社による自動車登録等の手続について、行政書士法違反になるものと考えられる具体例を公表しています。

この記事では、

  • 自動車販売店が車庫証明を代行してよいのか
  • 自動車登録を販売店が行う場合の注意点
  • 「無料サービス」なら問題ないのか
  • 「登録代行手数料」なら大丈夫なのか
  • 車両価格に手続きを含めればよいのか
  • 販売員はどこまで手続きに関与できるのか
  • 行政書士に依頼すると何が違うのか

について、行政書士法第19条を中心に具体例を挙げて解説します。


1.結論:自動車販売店だから車庫証明・登録申請書を作成してよい、とは限りません

まず結論から説明します。

自動車販売店が自社で販売した車について、顧客に代わって車庫証明申請書や自動車登録申請書を作成する場合、行政書士法第19条との関係が問題となる可能性があります。

日本行政書士会連合会が2026年7月に公表した資料では、次のような行為が、行政書士法違反になるものと考えられる具体例として示されています。

  • 自動車販売会社の販売員が車庫証明申請書を作成する
  • 自動車販売会社の販売員が自動車登録申請書を作成する
  • 販売店の顧客情報や車両情報を利用して申請書を作成する
  • 警察署や運輸支局等へ提出した後、販売員が申請書を追記・訂正・補正する

重要なのは、

「車を販売した会社だから、その車の登録手続きも当然に代行できる」

とは単純に考えられないという点です。

実際の業務については、誰が書類を作成したのか、誰の依頼で行っているのか、報酬が発生しているのかなどを総合的に確認する必要があります。


2.そもそも行政書士法第19条とは?

行政書士法第19条は、行政書士または行政書士法人でない者が、一定の書類について、他人の依頼を受け、報酬を得て、業として作成することを制限する規定です。

2026年1月1日施行の改正では、第19条第1項に、

「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」

という文言が追加されました。

ここで重要なのが、報酬の「名目」だけで判断されないということです。

例えば、

  • 書類作成料
  • 登録代行費
  • 手続代行費
  • 人件費
  • コンサルタント料
  • 商品代金

など、名称を変えれば行政書士法の対象から外れる、というものではありません。

したがって、

「申請書作成料は無料です」

と表示しているだけで、直ちに問題がなくなるわけではありません。


3.車庫証明申請書は誰が作成するもの?

車庫証明の手続きでは、一般的に次のような書類を準備します。

  • 自動車保管場所証明申請書
  • 保管場所標章交付申請書
  • 保管場所の所在図・配置図
  • 保管場所使用権原疎明書面
  • 保管場所使用承諾証明書
  • その他必要書類

車庫証明の申請は、原則として自動車の保有者が行う手続きです。

そのため、販売店が顧客から依頼を受け、顧客に代わって申請書を作成する場合には、行政書士法第19条との関係が問題となります。

国土交通省の資料でも、自動車登録申請は所有者が、車庫証明申請は保有者が行うものであり、自動車販売会社による申請書の作成については、販売業務に附帯する正当な業務の範囲を超えるものとして整理されています。

つまり、

「車を販売する仕事の一部だから、登録関係の申請書も販売員が作成してよい」

とは必ずしもいえません。


4.具体例①「車庫証明は無料サービスです」は大丈夫?

例えば中古車販売店が、

「車庫証明の手続きは無料サービスです」

として、販売員が顧客の車庫証明申請書を作成したとします。

一見すると、

「無料だから報酬を受け取っていない」

ようにも思えます。

しかし、無料という表示だけで行政書士法上の問題がなくなるとは限りません。

日本行政書士会連合会が2026年7月に公表した具体例では、車庫証明申請書の作成費用を無料としていた場合でも、車両の販売代金や整備代金等に実質的な対価が含まれていると考えられるケースについて、行政書士法違反になるものと考えられる例として示されています。

そのため、

「申請書作成料0円」と表示すれば安全

と考えるのは適切ではありません。


5.具体例②「登録代行手数料」として請求すれば大丈夫?

例えば、

車庫証明・登録代行手数料 30,000円

として顧客から料金を受け取っているケースです。

販売店側からすると、

「これは書類作成料ではなく、警察署や運輸支局へ行くための手続代行料です」

という考え方もあるでしょう。

しかし、問題となるのは料金の名称ではなく、実際にどのような業務を行い、その対価として何を受け取っているのかという点です。

書類作成を含む一連の業務について対価を受け取り、その中に書類作成に対する報酬が含まれていると判断される場合には、行政書士法第19条第1項との関係が問題となります。

したがって、

「登録代行手数料という名前にすれば大丈夫」

とはいえません。


6.具体例③「人件費・交通費だけなら大丈夫?」

これもよくある誤解です。

例えば、

「申請書作成は無料です。警察署まで行く人件費と交通費として20,000円いただきます」

というケースです。

ここで注意したいのが、実費の立替えと、販売店自身の人件費・交通費は同じではないということです。

例えば、

  • 印紙・証紙代
  • 公的な証明書の発行手数料
  • その他第三者へ実際に支払う公的な手数料

などを実費として立て替える場合と、

  • 販売員の人件費
  • 社用車のガソリン代
  • 販売店独自の交通費
  • 販売店の事務作業費

などを料金として請求する場合は、区別して考える必要があります。

特に、販売店自身の人件費や交通費を「実費だから問題ない」と考えるのは危険です。

それらが書類作成等の業務の対価として評価される場合には、行政書士法上の「報酬」と判断される可能性があります。


7.具体例④「車両価格に全部含めれば大丈夫?」

例えば、

車両価格150万円
※車庫証明・登録手続き込み

と表示して、販売員が顧客に代わって申請書を作成するケースです。

この場合、

「別途手数料を請求していないから大丈夫」

と考えることはできません。

2026年1月1日施行の改正行政書士法では、報酬について**「いかなる名目によるかを問わず」**という文言が明記されました。

したがって、

「登録費用」

「納車費用」

「車両価格」

など、名称を変更するだけで行政書士法の規制を回避できるわけではありません。

重要なのは、実際の業務と対価との関係です。


8.具体例⑤ 販売店の顧客データを使って申請書を作る場合

現在の自動車販売店では、顧客情報や車両情報がコンピューターで管理されていることも多いでしょう。

例えば販売員が、

  • 顧客の住所
  • 顧客の氏名
  • 使用の本拠
  • 車両情報
  • 車台番号
  • 型式

などを販売会社のデータベースから取得し、車庫証明申請書や自動車登録申請書を作成するケースです。

「会社にある情報を入力しているだけだから問題ない」と考えてしまうかもしれません。

しかし、日本行政書士会連合会が公表した具体例では、販売会社の顧客情報や車両情報を利用して申請書を作成する行為についても、行政書士法違反になるものと考えられる例として示されています。

パソコンで自動作成していても、問題となるのは「手書きかパソコンか」ではなく、誰が申請書を作成しているのかという点です。


9.具体例⑥ 警察署や運輸支局から訂正を求められたら販売員が直す

申請後の追記・訂正・補正についても注意が必要です。

例えば車庫証明申請書を警察署へ提出したところ、

「この部分を訂正してください」

「車台番号を追記してください」

と言われたとします。

このとき販売員が申請書に追記・訂正・補正を行うことについても、日本行政書士会連合会は行政書士法違反になるものと考えられる例として示しています。

これは、

「警察署の職員から言われたから訂正した」

という事情だけで問題がなくなるわけではありません。

自動車登録についても同様に、運輸支局等へ提出した後に販売員が申請書へ追記・訂正・補正する行為には注意が必要です。


10.では、自動車販売店は何もできないの?

ここは非常に重要です。

「自動車販売店は車庫証明や自動車登録に一切関与できない」

という意味ではありません。

問題となるのは、販売店が顧客に代わって、行政書士法で制限されている書類作成業務などを行うことです。

例えば、

  • 顧客に必要書類を案内する
  • 顧客自身による申請を案内する
  • 車両情報を顧客へ提供する
  • 必要書類について一般的な説明をする
  • 行政書士へ手続きを依頼する

など、具体的な行為については、それぞれ法的な位置づけを確認する必要があります。

特に、

「説明・案内」と「顧客に代わって申請書を作成すること」

は同じではありません。

販売店がどこまで関与しているのかを明確にすることが重要です。


11.行政書士に依頼すると何が違う?

行政書士は、行政書士法に基づき、官公署に提出する書類の作成などを業として行うことができます。

自動車関係では、例えば、

  • 新規登録
  • 移転登録
  • 変更登録
  • 抹消登録
  • 車庫証明
  • 自動車保有関係手続のOSS申請

などがあります。

そのため、自動車販売店が車庫証明や自動車登録の申請書作成・申請手続について行政書士と連携することで、販売店の業務負担を減らしながら、適切な業務分担を構築できます。


12.自動車販売店と行政書士が連携するメリット

メリット① 販売員の業務負担を減らせる

販売員が一件ずつ、

  • 車庫証明申請書
  • 所在図・配置図
  • 自動車登録関係書類
  • 委任状
  • その他の必要書類

を確認・作成する負担を減らせます。


メリット② 営業活動に集中できる

警察署や運輸支局へ行く時間や、書類作成にかかる時間を削減できます。

その分、

販売・接客・顧客対応

など、本来の営業活動に集中できます。


メリット③ 書類の不備や補正への対応を任せられる

自動車関係の手続きでは、記載漏れや添付書類の不足などによって補正が必要になることがあります。

専門家である行政書士に依頼することで、こうした手続き上の負担を軽減できます。


メリット④ 法令遵守につながる

2026年から行政書士法第19条について改めて注意が必要となっています。

そのため、

「今まで販売店でやっていたから大丈夫」

ではなく、現在の法令や行政書士会の公表資料を踏まえて、業務体制を見直すことが重要です。


13.2026年の行政書士法改正で何が変わった?

2026年1月1日に改正行政書士法が施行され、第19条第1項に、

「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」

という文言が追加されました。

この改正によって重要になるのが、

「料金の名前ではなく、実質を見る」

という考え方です。

例えば、

  • 登録代行費
  • 手続費
  • 人件費
  • 納車費用
  • コンサルタント料
  • 商品代金

など、どのような名称を付けたとしても、それだけで行政書士法の規制を回避できるわけではありません。


14.法人にも罰則が及ぶ可能性がある

今回の改正では、いわゆる両罰規定も整備されています。

行政書士法第19条第1項に違反する行為については、行為者だけでなく、一定の場合には所属する法人等にも罰金刑が科される仕組みがあります。

そのため、自動車販売会社としても、

「販売員個人がやったことだから会社には関係ない」

と考えるのではなく、

  • 従業員教育
  • 社内マニュアル
  • 業務分担
  • 手数料体系
  • 行政書士との連携体制

などを確認することが重要です。


15.自動車販売店がチェックしておきたいポイント

現在、車庫証明や自動車登録を販売店で行っている場合は、次の項目をチェックしてみましょう。

【車庫証明】

  • □ 販売員が車庫証明申請書を作成していないか
  • □ 販売員が所在図・配置図を作成していないか
  • □ 顧客データを利用して申請書を作成していないか
  • □ 「無料サービス」として申請書を作成していないか
  • □ 人件費・交通費などの名目で料金を受け取っていないか
  • □ 警察署で販売員が申請書を訂正・追記していないか

【自動車登録】

  • □ 販売員が登録申請書を作成していないか
  • □ 顧客情報を利用して登録申請書を作成していないか
  • □ 登録代行費の中に書類作成の対価が含まれていないか
  • □ 運輸支局等で販売員が申請書を補正していないか

【社内体制】

  • □ 従業員が行政書士法第19条を理解しているか
  • □ 販売員と行政書士の業務範囲を明確にしているか
  • □ 行政書士へ依頼する体制が整っているか
  • □ 従来の業務方法を2026年の法改正後もそのまま続けていないか

16.よくある質問

Q1.車庫証明を販売店が警察署へ持っていくだけなら違法ですか?

「持っていくだけなら必ず違法ではない」とも、「必ず適法」とも一概にはいえません。

誰が申請書を作成したのか、販売店がどの程度手続きに関与しているのか、顧客からどのような依頼を受け、どのような対価が発生しているのかなど、具体的な事情を確認する必要があります。

そのため、単に「提出だけだから問題ない」と判断するのではなく、業務全体を確認することが重要です。


Q2.お客様本人に申請書を書いてもらえば問題ありませんか?

顧客本人が自ら申請書を作成する場合と、販売員が顧客に代わって申請書を作成する場合では、法的な意味が異なります。

ただし、顧客が実際には記入せず、販売員が内容を実質的に決定・作成しているような場合には、具体的な関与の程度を確認する必要があります。


Q3.「登録代行費」ではなく「納車費用」にすれば問題ありませんか?

名称を変更するだけでは問題を解決できません。

2026年1月1日施行の改正行政書士法では、「いかなる名目によるかを問わず」とされています。

そのため、料金の名称ではなく、実際にどのような業務を行い、その対価として何を受け取っているのかが重要です。


Q4.自動車販売店から行政書士へ依頼することはできますか?

はい。

自動車販売店が行政書士と連携し、車庫証明や自動車登録に関する申請書作成・申請手続きを行政書士へ依頼する方法があります。

販売店は営業や顧客対応に集中し、行政書士が専門的な申請業務を担当するという役割分担を構築できます。


17.まとめ|「今まで販売店でやっていた」だけでは安心できません

自動車販売店による車庫証明や自動車登録の手続きについては、行政書士法第19条との関係を慎重に確認する必要があります。

特に注意したいのが、

「無料だから大丈夫」

「登録代行手数料だから大丈夫」

「人件費・交通費だから大丈夫」

「車両価格に含めているから大丈夫」

という考え方です。

これらは料金の名称だけで判断することはできません。

2026年1月1日に改正行政書士法が施行され、さらに日本行政書士会連合会も2026年7月に、自動車販売会社による車庫証明・自動車登録等について、行政書士法違反になるものと考えられる具体例を公表しています。

自動車販売店としては、

「誰が書類を作成するのか」

「誰が申請するのか」

「販売店はどこまで関与するのか」

「その業務に対してどのような対価が発生しているのか」

を整理することが重要です。

そして、販売店だけで判断することが難しい場合には、行政書士と連携して適切な業務体制を構築することも一つの方法です。


自動車販売店の皆様へ

「今まで販売店で車庫証明をやっていたけれど、今後もこの方法で大丈夫なのか?」

「販売員はどこまで手続きをしてよいのか?」

「登録代行費や納車費用の設定を見直したほうがよいのか?」

「車庫証明・自動車登録を行政書士に依頼したい」

このような場合は、現在の業務の流れや料金体系を確認したうえで、適切な業務分担を検討することをおすすめします。

車庫証明・自動車登録の手続きでお困りの自動車販売店様は、お気軽にご相談ください。

販売店様の業務負担を軽減しながら、適切な手続き体制を整えるお手伝いをいたします。

鹿児島県鹿児島市春山町の行政書士新川憲一事務所です。
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鹿児島市日置市及び近隣地域で、皆様の手続きを全力でサポート致します。


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