行政書士法第19条とは?無資格者はどこまでできる?具体例で徹底解説

「行政書士法第19条とは、どのような法律なの?」

「行政書士の資格がなくても、許認可申請の書類を作成できる?」

「行政書士ではない会社が、建設業許可や車庫証明を代行するのは違法?」

「コンサルタント料や手数料という名目なら問題ない?」

行政手続を自分で行ったり、許認可申請のサポートを利用したりする際、このような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

行政書士法には、行政書士または行政書士法人でない者が、一定の業務を行うことを制限する規定があります。

それが行政書士法第19条です。

さらに、令和7年(2025年)に行政書士法が改正され、令和8年(2026年)1月1日から施行されました。

今回の改正では、第19条第1項に、

「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」

という文言が加えられました。

これにより、料金の名称ではなく、実質的に行政書士業務に対する対価を受け取っているかどうかが重要であることが、より明確になりました。

この記事では、行政書士法第19条について、条文の意味から具体的な事例まで、できるだけわかりやすく解説します。


目次

  1. 行政書士法第19条とは?
  2. 第19条はなぜ重要なのか?
  3. 令和8年1月1日施行の改正で何が変わった?
  4. 「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」とは?
  5. 行政書士でなくてもできること
  6. 行政書士でない者が注意すべき業務
  7. 【具体例①】建設業許可申請
  8. 【具体例②】古物商許可申請
  9. 【具体例③】車庫証明・自動車登録
  10. 【具体例④】補助金・給付金の申請
  11. 「コンサルティングなら大丈夫」は本当?
  12. 「無料なら大丈夫」は本当?
  13. 法人や従業員が行う場合はどうなる?
  14. 第23条の3の両罰規定にも注意
  15. 行政書士に依頼するメリット
  16. まとめ

1.行政書士法第19条とは?

行政書士法第19条は、簡単にいうと、

行政書士または行政書士法人でない者が、一定の行政書士業務を行うことを制限する規定

です。

改正後の第19条第1項では、行政書士または行政書士法人でない者について、

他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない

と規定されています。

つまり、行政書士資格を持たない者が、他人から依頼を受け、報酬を得て、行政書士法第1条の3に規定される業務を「業として」行うことには制限があります。

ただし、ここで注意したいのが、行政書士法第19条には「他の法律に別段の定めがある場合」という例外があることです。

したがって、

「行政書士資格がなければ、官公署に提出する書類について一切何もできない」

という意味ではありません。

例えば、弁護士、司法書士、税理士、社会保険労務士などについては、それぞれの法律によって認められた業務の範囲があります。

そのため、行政書士法第19条を考える場合には、

「行政書士であるかどうか」だけでなく、「他の法律によってその業務が認められているか」

も確認する必要があります。


2.第19条はなぜ重要なのか?

行政書士の仕事には、さまざまな行政手続があります。

例えば、

  • 建設業許可
  • 古物商許可
  • 産業廃棄物収集運搬業許可
  • 自動車登録
  • 車庫証明
  • 各種営業許可
  • 在留資格に関する手続
  • その他官公署に提出する書類の作成

などです。

これらの手続では、申請書や添付書類など、多くの書類を準備する必要があります。

そのため、

「申請書くらいなら誰が作ってもいいのでは?」

と考えてしまうことがあります。

しかし、行政書士法では、行政書士の業務として一定の書類作成等が定められており、これを無資格者が報酬を得て業として行うことには制限があります。

第19条は、

「誰が、誰のために、どのような業務を、報酬を得て行っているのか」

を考えるうえで重要な規定です。


3.令和8年1月1日施行の改正で何が変わった?

令和7年6月13日に「行政書士法の一部を改正する法律」(令和7年法律第65号)が公布され、令和8年1月1日から施行されました。

今回の改正で、第19条第1項には、

「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」

という文言が加えられました。

これが今回の第19条改正を理解するうえで非常に重要なポイントです。

日本行政書士会連合会は、今回の改正について、

  • 会費
  • 手数料
  • コンサルタント料
  • 商品代金

など、どのような名目であっても、実質的に対価を受け取って対象となる書類を作成することについて、第19条第1項の業務制限の趣旨を明確化したものと説明しています。


4.「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」とは?

今回の改正で特に重要なのが、この部分です。

例えば、行政書士ではない会社が、

「書類作成料は無料です」

と説明しながら、

「コンサルタント料10万円」

を受け取っているとします。

この場合、

「書類作成料という名前のお金を受け取っていないから大丈夫」

とは単純には判断できません。

重要なのは、料金の名称ではなく、実際にどのような業務を行い、その対価として何を受け取っているのかです。

日本行政書士会連合会も、会費、手数料、コンサルタント料、商品代金など、どのような名目であっても対価を受領し、業として対象となる書類を作成することについて、第19条第1項との関係を明確にしています。


今回の改正で「新しく違法になった」のではない

ここは特に注意が必要です。

今回の改正によって、

「令和8年1月1日までは無資格者ができたけれど、それ以降は禁止された」

という単純な話ではありません。

日本行政書士会連合会は、今回の改正について、従来から第19条第1項に違反する行為について、報酬の名目を問わないことを条文上明確化したものと説明しています。

したがって、

「新しい禁止規定ができた」

というより、

「従来から存在する業務制限について、報酬の名目を問わないことを明確化した」

と理解することが重要です。


5.行政書士でなくてもできること

では、行政書士資格を持っていない人は、行政手続について何もできないのでしょうか。

そうではありません。

代表的なのが、本人による申請です。

例えば、自分自身が建設業許可を申請する場合、自分で申請書類を作成することはできます。

また、一般的な情報提供や制度の説明と、他人から依頼を受けて具体的な申請書類を作成することは同じではありません。

例えば、

「建設業許可にはこのような要件があります」

「古物商許可にはこうした書類が必要です」

など、一般的な情報を提供すること自体と、依頼者から具体的な情報を聞き取り、その人のために申請書を完成させることは区別して考える必要があります。


他の法律で認められた専門家にも注意

さらに、第19条には、他の法律に別段の定めがある場合の例外があります。

例えば、弁護士、司法書士、税理士、社会保険労務士などは、それぞれの法律によって一定の業務を行うことが認められています。

したがって、

「行政書士ではないから、すべての官公署提出書類を作成できない」

というわけではありません。

それぞれの資格について、各士業法で認められている業務範囲を確認する必要があります。


6.行政書士でない者が注意すべき業務

行政書士でない者が、他人から依頼を受けて報酬を得ながら、行政書士法第1条の3に規定される業務を行う場合には、第19条との関係が問題になります。

例えば、

「建設業許可申請を10万円で代行します」

として、依頼者から情報を聞き取り、その内容をもとに申請書を作成するケースです。

また、

「古物商許可取得サポート5万円」

として、実際には依頼者のために申請書を作成している場合も同様に注意が必要です。

重要なのは、

サービスの名前ではなく、実際に行っている業務の内容

です。


7.【具体例①】建設業許可申請

建設業許可を取得するためには、さまざまな申請書や添付書類を準備する必要があります。

例えば、

  • 建設業許可申請書
  • 営業所一覧表
  • 役員等の一覧表
  • 専任技術者等に関する書類
  • 経営業務の管理責任者等に関する書類
  • 財務関係書類

などがあります。

行政書士ではない事業者が報酬を受け、

「建設業許可申請を代行します」

として、依頼者のために申請書類を作成する場合には、第19条との関係を慎重に確認する必要があります。

特に、

「行政書士業務ではなくコンサルティングです」

という名称だけで問題を回避できるわけではありません。

実際にどのような業務を行い、料金との間にどのような対価関係があるのかが重要です。


8.【具体例②】古物商許可申請

古物商許可申請についても同じ考え方ができます。

例えば、行政書士ではない会社が、

「古物商許可取得サポート5万円」

として、依頼者から必要事項を聞き取り、申請書を作成するケースです。

「サポート料」という名称だから問題ない、と単純に判断することはできません。

実際に、

  • 依頼者の情報を収集する
  • 申請書を作成する
  • 添付書類を整える
  • 官公署へ提出する書類を完成させる

などの業務を報酬を得て業として行っているのであれば、第19条との関係を確認する必要があります。


9.【具体例③】車庫証明・自動車登録

自動車関係の業務は、第19条を理解するうえで特に分かりやすい分野です。

例えば、

  • 車庫証明
  • 自動車登録
  • 名義変更
  • 住所変更
  • 抹消登録
  • 車検証関係の手続

などがあります。

日本行政書士会連合会は、2026年7月29日、「自動車登録等の手続における行政書士法違反になるものと考えられる例について」を公表しました。

この資料では、自動車販売会社の販売員が行う車庫証明申請や自動車登録について、行政書士法違反になると考えられる具体例が示されています。

例えば、

  • 車庫証明申請書の作成を代行する
  • 自動車登録申請書の作成を代行する
  • 顧客情報や車両情報のデータベースを利用して申請書を作成する
  • 提出後に車台番号を追記する
  • 記載内容を訂正・補正する

といった行為が挙げられています。

特に重要なのは、

「書類作成費用は無料だから大丈夫」とは限らない

という点です。

日行連が示した例では、車両の販売代金や整備代金等に報酬が含まれていると考えられる場合には、無料としていても行政書士法違反になるものとされています。

これは、第19条の「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という改正内容を具体的に理解するうえで、非常に参考になる事例です。


10.【具体例④】補助金・給付金の申請

補助金や給付金の申請についても注意が必要です。

日本行政書士会連合会は、第19条改正の背景として、コロナ禍において行政書士または行政書士法人でない者が給付金等の代理申請を行い、多額の報酬を受け取っていた事例が散見されたことを挙げています。

例えば、

「補助金申請代行10万円」

として、申請者に代わって具体的な申請書類を作成し、その対価を受け取る場合には、行政書士法との関係を確認する必要があります。

ただし、

補助金・給付金に関するすべての業務を行政書士だけが独占しているという意味ではありません。

補助金の種類、申請内容、対象となる書類、他法令による資格制限などを個別に確認する必要があります。


11.「コンサルティングなら大丈夫」は本当?

結論からいうと、

「コンサルティング」という名前を付ければ大丈夫、ということではありません。

例えば、

「経営コンサルティング料10万円」

として料金を受け取り、その中で実際には依頼者のために建設業許可申請書を作成している場合です。

この場合、

「書類作成料は0円です」

と説明していても、コンサルティング料と実際の書類作成業務との対価関係が問題になります。

一方で、経営に関する一般的な助言や経営改善に関するコンサルティングそのものと、依頼者のために具体的な官公署提出書類を作成することは別の問題です。

したがって、

「コンサルティング」という名称だけで判断しない

ことが重要です。


12.「無料なら大丈夫」は本当?

これも注意が必要です。

行政書士法第19条は、報酬を得て業として行う場合の業務制限を定めています。

しかし、

「無料で書類を作成するなら、行政書士でなくても何でもできる」

と単純に考えることはできません。

また、形式上は無料であっても、

  • 商品代金
  • 整備代金
  • 会費
  • 手数料
  • コンサルタント料

など、別の名目で対価を受け取っているのであれば、

「書類作成は無料だから問題ない」

とはいえません。

実際、日行連が2026年7月29日に公表した自動車関係の資料でも、車庫証明や自動車登録の書類作成費用を無料としていても、販売代金や整備代金等に報酬が含まれていると考えられる場合には行政書士法違反になるものとされています。


13.法人や従業員が行う場合はどうなる?

行政書士法第19条は、個人だけの問題ではありません。

例えば会社が、

「実際に書類を作成したのは従業員だから、会社には関係ない」

と考えることはできません。

会社の業務として従業員が第19条第1項に違反する行為を行った場合には、法人についても注意が必要です。

特に今回の改正では、第23条の3の両罰規定が整備されました。


14.第23条の3の両罰規定にも注意

両罰規定とは、

違反行為をした本人だけでなく、一定の場合には法人にも罰則を科す

という制度です。

今回の改正では、第19条第1項の業務制限違反について、違反行為者だけでなく、その者が所属する法人にも罰則が及ぶ仕組みが整備されました。

法人については、100万円以下の罰金刑が規定されています。

したがって、許認可申請の代行サービスなどを提供している事業者は、

  • 誰が書類を作成しているのか
  • 誰から依頼を受けているのか
  • 何の対価として料金を受け取っているのか
  • 実際にどこまで業務を行っているのか

を確認しておくことが重要です。

単に、

「従業員が独断でやった」

というだけでは済まない場合があります。

企業として行政書士法を含む関係法令へのコンプライアンス体制を整えておくことが重要です。


15.行政書士に依頼するメリット

行政手続は、自分で行うこともできます。

しかし、許認可によっては、

  • 必要書類の確認
  • 許可要件の確認
  • 添付書類の確認
  • 申請書類の作成
  • 行政庁への提出
  • 補正への対応

など、さまざまな作業が必要になります。

行政書士は、行政書士法に基づき、官公署に提出する書類や権利義務・事実証明に関する書類などについて、一定の業務を行う専門家です。

特に、

  • 建設業許可
  • 古物商許可
  • 産業廃棄物収集運搬業許可
  • 自動車関係手続
  • 各種営業許可

など、要件や必要書類が複雑な手続については、行政書士に相談することで手続の全体像を整理しやすくなります。


16.まとめ|行政書士法第19条は「誰が・何を・対価を得て行うか」が重要

行政書士法第19条は、行政書士または行政書士法人でない者が、一定の行政書士業務を行うことを制限する重要な規定です。

令和7年法律第65号による改正では、

「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」

という文言が追加されました。

これによって、

  • コンサルタント料
  • 手数料
  • 会費
  • 商品代金

など、料金の名称だけを変えることで行政書士法の業務制限を避けることはできないという趣旨が、より明確になりました。

ただし、今回の改正によって、無資格者による有償の行政書士業務が初めて禁止されたわけではありません。

日本行政書士会連合会は、今回の改正について、従来から第19条第1項に違反する行為について、その趣旨を明確化したものと説明しています。

また、第19条には他の法律に別段の定めがある場合の例外があるため、弁護士、司法書士、税理士、社会保険労務士など、他の法律によって認められた業務まで一律に禁止されるわけではありません。

行政書士法第19条を考えるときには、

誰が行うのか

誰の依頼を受けているのか

どのような書類を作成するのか

どのような対価を受け取っているのか

他の法律による例外がないか

という点を確認することが重要です。

行政手続について「自分でできるのか」「行政書士に依頼した方がよいのか」と迷った場合には、具体的な業務内容を整理したうえで、行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。



※この記事は、行政書士法および日本行政書士会連合会が公表している資料等をもとに、行政書士法第19条の一般的な考え方を解説したものです。個別の行為が行政書士法第19条に違反するかどうかは、具体的な業務内容、契約関係、報酬の実態、他の法律の規定などによって判断が異なる場合があります。個別案件については、関係法令や行政庁の取扱い等を確認してください。

鹿児島県鹿児島市春山町の行政書士新川憲一事務所です。
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